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第二創世史が終わりを迎えてから,気が遠くなる程
の永い年月が経つ日
宇宙は無限大の惑星達が軌道に沿い,エネルギー体
のみの恒星となった太陽を中心に廻って居た
太陽惑星が爆発した後,その剥がれた惑星の欠片達
が永い年月を掛けながら,一つ々々の小さな惑星
へと形容を変えて行った
その中で第三創造主は二人揃って眠りについて
居り,太陽の大地は二人の眠る場所にだけしか残さ
れて居なかった
そんなある日,第三創造主の一人の白き創造主は
静かに目覚めたのだ
そして己の腕で抱きしめて居た眠りの黒き女を
優しく揺さぶり,黒き創造主の緩やかな目覚めの姿
に身を震わす
微笑み合う二人の前に,二人の男女やその従者達が
現れては皆頭を垂れ,二人にこう告げたのだ
新たな物語が始まりました,我等が
創造主様方---------------…
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黒き創造主と白き創造主は太陽に一番近い惑星に
一つの世界を創り上げ,創造主達はその聖地を拠点
にした
聖地には様々な命を創り上げ,その従者と共に皆に
役割を与え,二人の創造主は聖地を素晴らしく循環
させて行った
黒き創造主と白き創造主はこの上無く仲の良い姉弟
として,何時も側に居り,その中でも白き創造主は,姉
の黒き創造主にかなり執心で在った
ある日,黒き創造主は白き創造主と共にこの地を一度
離れる事を決め,全ての従者を酷く驚かした
黒き創造主は述べた,太陽の周りに散らばる何も無い
惑星達に命を吹き込ませ,そして宇宙全体を潤わす
強い望みが有ったのだが,それを聞いた従者達は皆,
猛反対した
それでも諦める事は無い黒き創造主とそんな姉を
守る白き創造主に,黒き男は皆を宥めながら,黒き
創造主に自由に創造する"権利"と共にその"責任"を
求めた
それを約束した黒き創造主は大いに喜び,そして弟
の白き創造主と共に様々な世界を創造し始めたのだ
この後,宇宙最大の事件が起こる事も知らずに黒き
創造主は只々,白き創造主に優しく微笑んだ
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第三創造主は,様々な命溢れる世界を次々と創り
上げ続けて行った
その度に黒き創造主は生み出した命達に愛を与え,
そして自身の手伝いをしてくれる弟の白き創造主
に感謝をした
姉が感謝してくれる度に喜びで満ち足りて居たと
言うのに,何時の日か,白き創造主は愛する姉で在る
黒き創造主に愛される命達に嫉妬し始めたのだ
その日を境に,徐々に黒き創造主と白き創造主の
関係は変わり果てて仕舞う事となった
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黒き創造主が命を創り上げる度に癇癪を起こし,
自身への愛を確かめようとする過激な干渉を行う
白き創造主に対して,黒き創造主は次第に嫌気を
感じる様になった
それでも,自身の愛する弟だからと耐えながら白き
創造主を側に置く時間が永ければ永い程,重過ぎる
程のし掛かる執心や激情と共に,愛する命達を
狂わせた行為に,悲鳴を上げた黒き創造主は酷く
すがりつく白き創造主をつき放し,悲しみと怒りと
自身への恥に因って逃げ出したのだ
最愛の姉が自身から離れた事,そして自身を必要と
し無くなる事と共に,愛してくれ無くなる事への
酷過ぎる恐怖に苛まれ,
独りとなった白き創造主はその成長させ過ぎた
依存と混乱と恐怖に因り狂い果て,そして不幸に
も,封印した過去の記憶を全て思い出して
仕舞ったのだ
それに因り,何もかもが狂って仕舞った白き
創造主は,あの過去から足した溢れるばかりの怒り
と憎しみと哀しみと愛情と怨みを全て,黒き創造主
に入れ込み,そして,
黒き創造主の全てを奪い,自身の要らぬ黒き激情,
そして過去を思い出させてくれた命達に報復と
感謝の為に,自身の赤黒き劇毒を全宇宙に撒き散ら
しながら軽やかに,全大地を踏み遊んでは聖地へと
足を運んで行った
その日から,全世界は闇を否応無く味わう事と
なった
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怒りと悲しみに染まった黒き創造主は急いで,
弟の居る聖地へと足を駆け巡らせて居た
白き創造主と離れた日を境に命達は皆,武器を
片手に争い始め,呪い,怨みと共に全世界は大混乱
を極めて居たのだ
白き創造主が裏切り者と共に聖地を支配した
-----------…
傷だらけの懐かしき従者が命をかけて告知した
内容に黒き創造主は酷くも驚き,そして急いで
聖地へと戻った瞬間に驚愕したのだ
変わり果てた聖地や支配され,傷ついた従者達,
そして何処かで見た事がある様な美しい装飾に
身を包んだ白き創造主の姿形…
艶やかな笑みや外面に,その溢れるばかりの禍々
しい狂気に背筋を凍らせた黒き創造主に,白き
創造主は滑らかに近づき,そして口づけと共に
剣を突き刺した
あの時と同じ場所に,あの時と同じ
形をした剣でこの胸を-------------…
呪いと共に,聖地から落とされた黒き創造主の
後を追う様に,白き創造主は恍惚の笑みを浮かべ
ながら聖地から飛び降り,そして,主人の後を追う
様に裏切り者達も聖地から飛び降りたのだ
後に起こる騒動と共に,生き残った従者達からは
この一連の出来事を"あの事件"と呼び,あの事件
が終えて尚,現在も忘れ難き戒めとして,永久に
語られる事となるのだ