アイカナシヤ

 あい、哇(アイ)、娃(アイ)、哀(アイ)、相(アイ)、愛(アイ)、阨(アイ)、怨(オン)_____________…

喉から強く望んで居るのにも関わらず、自身の口から出て来るのは言の葉無き熱き呼吸音のみ。この部屋に無情にも響き渡る睦事じみた戯事。

間(アイ)愛(カナ)しや、
間(アイ)悲(カナ)しや、
間(アイ)哀(カナ)しや、
相(アイ)頃(コロ)しもの___________________…。

静寂たりし闇夜に置き去りにされそうになる童の如く、この上無く愛慕うて居た者に手放されそうになる者の如くに。目の前の豊満たりし濃い伽羅色の肌に強く口づけを続けるだけのこの行為に。

 愛顧(コ)がう、その者の右の、爪の、その先から両の手を添えて、口づけては甲に口をつけ…。その手と共に滑らかに上を這う様に脛(スネ)、腿(モモ)、付け根、腰へと口づけを繰り返せば頂きからくぐもった声無き声がこの空間を静かに震わす。


…___________嗚呼、貴方様はこの時でさえ、逃げ仰そうと諦めて無いのですね。


見ずとも分かる頂(イタダキ)から我が頭上に感じる淡紫の、双眼の、とろりとした甘き輝きに包まれた深奥に住まうは堕ちる事無き、静寂たりし気高き獣王。

汗滴る事にこの身を離さない伽羅色の上半身に、荘厳たる椅子ごとを強く縛った真白の縄から織り成す彩色美と共に在らう立体美。桜の色に近い淡白の、弾力が有らう唇を無理やりにも開いた真白の縄は今、その王の粘り気の無い唾液と見えぬ舌で染め上げ様として居る経過に、どろりとした赤黒き念情(ネンジャウ)に侵される我が身よ。

目先に存在する甘やかにも、濃密故にも香る豊かな茂みの果てにあらう、甘露溢れ出す聖域をこの杭で踏み荒らせる筈も無く______________…。

 しとりと麗しの伽羅色の豊満さと対極たりし自身の真白き肌色と、朽ちる事無き蛇蝎(ダカツ)のような身体と共に在り続かう青さと質感に眉をひそめ、先程まで生気の無い薄い唇で丹念に口づけていた、向かう右腿の付け根近くの。
自身の長き髪の色と同色とした淡月色の装飾輪に苛立ちを込めて噛みつく唇と、その根の脛と膝を両手で強く握り締めるのは。この身持て余し尽くす醜き愛憎故の念情か、毎度捕らえ込んでは鎖に厳重に縛り上げて居るのもに関わらず、軽やかに逃げられて終うと嘆く狂気に果てた王の怨念か、将又終わり無き執着を捧げる隷属たりし自身をも置き去りにしようとする、ご主人へと縋(スガ)りつく無念泣きか…。


 あい、哇(アイ)、娃(アイ)、哀(アイ)、相(アイ)、愛(アイ)、阨(アイ)、怨(オン)_____________…

喉から強く望んで居るのにも関わらず、自身の口から出て来るのは言の葉無き熱き呼吸音のみ。この部屋に無情にも響き渡る睦事じみた戯事。

間(アイ)愛(カナ)しや、
間(アイ)悲(カナ)しや、
間(アイ)哀(カナ)しや、
相(アイ)頃(コロ)しもの___________________…。

静寂たりし闇夜に置き去りにされそうになる童の如く、この上無く愛慕うて居た者に捨てられそうになる者の如くに。目の前の豊満たりし濃い伽羅色の肌に強く口づけを続けるだけのこの行為に、


 瞳を閉じた。



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Master, Yuki Hayashi.